奇異なる武士はお松を背負うて、桂川の岸の大石小石の歩きづらい中を飛び越えて、流れと共に下って行くのであります。

この時に、がんりき[#「がんりき」に傍点]はどこへ行ってしまったか、姿も形も見えません。「これから私が案内をして上げます、御安心なさいまし」 馬子はお松の先に立って、崖道《がけみち》を桂川の岸へと下りて行きます。 しばらくしてこの馬子は、桂川の岸にある船小屋のところまで来ました。そこで振返って...

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お松の足は、ひとりでにその木下闇から離れて、馬子の提灯の方に引き寄せられました。

「覚えてやがれ」 ややあって、こう言ったそれは、がんりき[#「がんりき」に傍点]の声でありました。それは少しばかり遠いところへ離れて聞えました。大地へ打ち倒されたのがどうかして起き上って、命からがら逃げ出した捨台詞《すてぜりふ》のように聞えて、それから後は静かになりました。お松は身体を固くして木蔭...

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「誰だッ」  途中で不意に異様な声を立てて、お松の手を放してしまいました。

どのみち危ない道を踏んだ以上は、手を束《つか》ねて捕われの身になることもいやです。所詮《しょせん》、死を決したからには、逃げられるだけは逃げた方が怜悧《りこう》ではないかとさえ思われるのであります。しかし、人もあろうに、この男の手引で夜分逃げ出すということは、いくらなんでも、まだその気にはなれないで...

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